MX ROCK 祭り JUN SKY WALKER(S)
『ALL TIME BEST ~全部このままで~1988-2018』
ライブレポート

 5月21日のデビュー日を目前に控えた19日、JUN SKY WALKER(S)がデビュー30周年ライヴ『“MX ROCK祭り” JUN SKY WALKER(S)「ALL TIME BEST~全部このままで~1988-2018」を行なった。場所は中野サンプラザ。原宿ホコ天というストリートから始まりライヴハウス、ホール、スタジアムに至るまで、数多くの会場でライヴをしてきた彼らにとって、運命の巡り合わせか、“初”となる地だ。
 その会場に入るとステージは紗幕に覆われていた。
 定刻の17時30分を少し回った頃、客席の電気が消え、紗幕に数字が映し出される。その“年”を表す数字が1つずつ増えていき、2018まで来た時、紗幕が落ち、照明が煌々とつく。ステージには、定位置についた宮田和弥、森純太、寺岡呼人、小林雅之の4人の姿がある。シンバルのカウントが響き、スピーディな演奏が始まった。オープニングは「全部このままで」だ。スタンドごとマイクを握りしめた宮田が歌を発する。森が客席ギリギリまで進み出てくる。これに反応した会場を埋め尽くすオーディエンスたちは、人差し指を伸ばした手を高く振り上げ、歌い、想いを重ねる。急速に立ち込めた熱気を煽り立て、すぐさま「いつもここにいるよ」が放たれる。
 アンプとそれぞれの足下にあるモニタースピーカー、ドラムを1段上げるドラム台、そしてバックドロップ代わりのスクリーンのみというシンプルなステージで、 “いつもここにいるよ”と繰り返し歌う宮田は革ジャンを羽織り、タイトなブラックデニム。森は黒いシャツに、寺岡はモッズスーツを着ていて、小林はボーダーのTシャツ。デビュー時と変わらない体のフォルムで音楽を吐き出す。
 昨今、世界を席捲したEDM(electronic dance music)をはじめ、ロックシーンでもシンセやデジタルを取り入れたり、複数のトラックが同期する音楽が主流だ。対して、届くJUN SKY WALKER(S)の楽曲はシンプルそのもの。引き締まっていて的確かつ重い小林のドラム。確実でリズムに奥行きを加える寺岡のベース。森のギターはキレ味鋭く、宮田のヴォーカルは少しヤンチャで味わいがある。その贅肉を削ぎ落としたアンサンブルは、シンプルな分強固で鋭利な塊となって深く体に突き刺さる。言葉をシャープに心に注いでくる。そしてこの音楽の中にいるのは今の4人であり、届くのは4人からの今のメッセージだ。
 1988年に発表になった「明日が来なくても」。ステージから「僕は走るために、荷物を降ろした」という言葉が響いてくる。あれから生きた年数だけ降ろせない荷物は増えたし、日常に繰り返し感を覚えることが多くなった。でも日々に追われ目を向けていないだけで、降ろすべき荷物もそのままにしていないか? 走りだそうとしていないだけじゃないのか? そう問われた気がしてドキっとする。ミディアムテンポの演奏に切々とした歌が乗った「さらば愛しき危険たちよ」では、変わらなきゃいけないと焦っていたあの頃の自分が、イカシタ大人になったか?と今の自分に問い掛けてくる。懐古ではなく今の己に響く音楽が鳴っている。だからこそ親に連れられて来たであろうティーンエイジャーにも届いている。彼らも腕を振り上げて声を上げている。
「再結成後にできた歌です。俺たちとお前たちの未来の歌です」。そう宮田が告げた「NO FUTURE」。スクリーンに演奏する4人と歌詞が映し出される。心に引っ掛かるフック感のある演奏と、親密さが滲んだ強い歌が、それなりの成功を手にしても虚しいと感じている想いに語りかけてくる。大事なのは自分がどうするかだ、一歩踏み出すんだと背中を押してくる。そして曲のラスト、宮田が「My friend!」と叫びながら森を指刺し、ステージをグルっと見てから客席を見渡す。そこには“共にいる”という想いがあった。
 30周年のスペシャルなライヴということで詰めかけたオーディエンスにプレゼントも用意されていた。「ロマンチック」を終えたタイミングで寺岡が言う。

「小林くんの家で貴重な映像が見つかったから、みなさんと観たいと思います」

 スクリーンに投影されたのは、初の渋谷公会堂公演の次の日にゲリラで行なった、JUN SKY WALKER(S)最後の歩行者天国でのライヴの模様だ。観客が押し寄せる中、飛び跳ね、演奏し、歌う4人。みんな少し若いけれど、根っこが変わってなくてニヤッとしてしまう。
 そして50歳代になっても転がり続ける彼らは今も自由で、しなやかでもある。
「メロディ」の後、一度メンバーが去ったステージでは「どうかな」をBGMに、ママチャリに乗った小林がかつてメンバーが住んでいた場所を巡り中野サンプラザに行き着くという映像が流す。場内をほっこりさせる。
 さらにサプライズがある。再登場した1発目「僕を灰に」で、宮田がハーモニカを吹き、小林はドラムを叩きつつ自身が作ったゴキゲンなこの曲の歌う姿を初披露する。続く「エルマーの夢」は寺岡がJUN SKY WALKER(S)で最初に手掛けた1曲。宮田がアコースティックギターを手にして、寺岡がベースを弾きながら温かく「エルマーの夢」の歌を初めてセンターで歌う。森のギター&ヴォーカルでの「変身」は宮田が捌けてスリーピースで届くが、この編成でのプレイも初だ。深く少し切なく、そして意志の隠った森の歌声が聴く者を包んだ。
「Let's Goヒバリヒルズ」、「ロックンロール☆ミュージック」。脈々と受け継がれてきたロックへの敬愛溢れる音楽を立て続けにブチかまし、それに反応してザワつく場内に向けて、宮田が「ジュンスカって尖った感じで出てきたけど、日本の綺麗なメロディが根底にあると思うんだよね」と言う。そして「次の曲のアウトロでさ、みんなのスマホやガラケーでイルミネーションを作ってほしいんだ」と呼びかけた。凜とした演奏が「白いクリスマス」を紡ぐ。君への後悔が滲む宮田の歌は、冬の冷たい空気の中で吐く白い息に、人の温度を感じるような温かさがある。アウトロ、歌の余韻を受けて、2階席の奥まで灯りが揺れる。ステージから観たその景色がスクリーンに映される。それはここにいる全員が作った世界だった。
 ライヴは後半に向け加速する。その起爆剤になったのは「START」である。真っ直ぐな演奏と歌が真新しい明日へ走り出すための、希望というエネルギーを注いで回る。そして行き着いたのは、ニューアレンジになった「言葉に詰まる」だ。どっしりしたビートに、エッジーなサウンドアプローチが施され、歌には感情が滲む。それは拭えない別れの数や、手放せずにいる過去の思い出の数だけの重みと、それを背負ってステージに立つ意志が満ちた音楽だった。
 アンコールを呼ぶ声が鳴り渡る場内では、9月から年を跨ぎ3月までかけて30周年に因み全国30ヵ所を廻るツアーをすること、デビュー日の5月21日から4人ではデビュー以来となるラジオ番組を始めることが告知される。
 そして姿を現した宮田は「最終的には47都道府県へライヴをしに行きたい!」とデッカイ未来を語る。その発言を受け歓声に湧くオーディエンスに贈られた「MY GENERATION」。共にステージに立つメンバー、スタッフ、目の前にいるオーディエンス、さらにはこの場にはいないけれどJUN SKY WALKER(S)の音楽と共に生きてきた人たちと、これから心をシンクロさせるティーンエイジャー……奇跡的に同じこの時間を生きる者への愛と、一緒に叫んでいこうという賛歌だ。
 さらにもう1度、JUN SKY WALKER(S)はアンコールに応える。

「この歌の主人公はあなたです」

 そう告げた宮田。彼らが記念ライヴの最後に選んだのは、2日後のデビュー日にリリースするベストアルバム『ALL TIME BEST~全部このままで~1988-2018』収録の新曲「One-Way」である。刻みつけたい想いをリズムに託し、心の抑揚をメロディに変換して、歌に乗せ大切に届けられる言葉。くじけたからこそ、なくしたからこそ、今と進める未来がある。これからもずっと歩き続けよう。そんな約束が心の奥深くに突き刺さってきた。
 今夜の初の中野サンプラザ、ワンマン公演。
 初めてレコードレーベルの垣根を越えて制作されたベストアルバム。
 デビュー30周年を迎えたJUN SKY WALKER(S)はいくつもの“初”に挑み続けている。
 同じことの繰り返しと思えている僕たちの日常にも、しっかり意識を向ければ大小こそあれ、初めてのことがあるはずだ。そんな“初”という挑むべき対象がある明日、これから始まる新しい日にスタートを切っていきたい、そう思った。

文・大西智之

SET LIST

1.全部このままで
2.いつもここにいるよ
3.明日が来なくても
4.さらば愛しき危険たちよ
5.砂時計
6.NO FUTURE
7.ロマンチック
<ジュンスカ最後のホコ天映像>*通常盤封入特典
8.休みの日
9.風見鶏
10.ユア・ソング
11.青春
12.メロディ
<小林雅之VTRコーナー「どうかな」>
13.僕を灰に(ソロ歌唱:小林雅之)
14.エルマーの夢(ソロ歌唱:寺岡呼人)
15.変身(ソロ歌唱:森純太)
16.Let’s go ヒバリヒルズ
17.ロックンロール☆ミュージック
18.白いクリスマス
19.愛しい人よ
20.START
21.すてきな夜空
22.歩いていこう
23.言葉につまる
<ENCORE>
1.MY GENERATION
2.One-Way *新曲初披露