JUN SKY WALKER(S)
『30th Anniversary Tour FINAL ~全部このままで~』
日比谷野外大音楽堂 ライブレポート

「A rolling stone gathers no moss.」
 ステージ上で音楽を鳴らす4人を観ていて、そして彼らの音を全身に浴びていて、この言葉が何度も浮かんできた。
 2019年5月25日、日比谷野外大音楽堂でJUN SKY WALKER(S)が行なったワンマンライヴ『30th Anniversary Tour FINAL 〜全部このままで〜』。デビュー30周年を迎えて、全国30カ所を巡ってきたツアーの締めくくり。31本目にして、メモリアルイヤーの集大成にあたる公演だ。
 しかも、日比谷野音は彼らにとって縁深い場所である。デビュー翌年に初めてこの地でワンマンを行った時は豪雨の中のライヴとなり、それ以後何度もここで雨に見舞われるなどしてきたが、野外ならではのなにもかもを味方に引き込むパフォーマンスで観る者の記憶にその時々の姿を刻んできた。1997年に1度解散した時の最後のステージも日比谷野音だったし、復活後も数回、ツアーファイナルをこの会場で迎えている。彼らとファンの“聖地”なのだ。
 今回は晴天に恵まれている。
 立ち見席までソールドアウトしており、開場時間前からたくさんの人が押し寄せていた。
 会場に入るとステージ奥のモニターには、デビュー当時の原宿ホコ天の映像が映し出され、スピーカーからは「全部このままで」が流れている。その後も続けて、MVと共に「すてきな夜空」、「歩いていこう」……過去の曲が場内でかかり、オープニングを待つオーディエンスの高揚感を煽っている。
 18時を少し回ったところで、まだ明るい会場にブルーの照明が灯り、ゆったりとしたSEが流れ始める。ステージの下手側からメンバーが登場、オーディエンスを見渡したかと思うと、観客席へと降り、手を伸ばす観客に応えながら、そのまま通路を突き進む。そして会場のど真ん中に設置された細長いサブステージに並び立ち、宮田和弥、森純太、小林雅之は6弦、寺岡呼人が12弦アコースティックギターを持つ。抜けるような空の下、比較的近い距離でぐるりとオーディエンスが囲むこの光景は、原宿ホコ天のストリートライヴという彼らの原点を思わせた。
「ワン、ツー、スリー、フォー」
 宮田の発したカウントに呼吸を合わせ、ア・カペラによる4声のハーモニーが響いた。曲は、1988年のメジャー・デビューアルバムの表題曲だった「全部このままで」。グッとテンポを落としたアレンジに合わせて、観客のクラップが重なる。4本のアコースティックギターの音色と宮田のヴォーカルに宿る、温かく、柔らかい感情が広がっていく。それは、原曲にあった衝動とむき出しの決意で、見えない未来を進んでいく、ヒリヒリした音と違った肌触りだ。だからこそ、浮き彫りになったものが日比谷野音に響き渡るアンサンブルにはある。あれから30年と少しを経てもなお、“このままで”ありたいと、メンバーが、オーディエンスが心に持ち続けているものは、“過ぎて行く時間だけで年をとったりしない”ということ。やりたいこと──それは形が変わったものも、変わってないものもあるけれど、それらをどこまでも心の軸に持ち、希望を持ってやってきたし、やっていくんだ、という、歩んできた時間分の実感が積もった揺るぎない想いである。そうすれば人は錆びることなく、青春は続くという宣言によるライヴの始まりだ。
 1曲目の演奏を終えたメンバーは、今度は下手側の通路を進んでいく。宮田はブルースハープを吹きつつメインステージへと歩く。その間、モニターでは“2019”から数字が巻き戻っていき、“1988”へと到達する。メインステージに上がった宮田が、定位置に着いた小林を指差す。シンバルカウントから始まったのは、1988年発表の「だけど一人じゃいられない」である。宮田が足元の大きなモニタースピーカーに片足をかけて歌う。4人の音のみで成り立ったロックが放たれる。シンプルがゆえに、森、寺岡、小林の音と、宮田の声には、それぞれの人間性や生き様が宿っていることがわかる。4つの音の縦が揃った時に、太く尖った杭となり、心の奥深くに突き刺さってくる。会場には、メンバーと共に年齢を重ねてきた人も、親と一緒に来た子供も、ティーンエイジャーもいて、彼らは想いを託して腕を振り、歌う。若い世代の代弁者だったJUN SKY WALKER(S)の音楽は、世代を超えたものとなっていた。それは、とてもピースフルで、この先の人生への希望を感じさせるものだ。
 そして30周年で自らと向き合ったからこそ、深みを得たナンバーもある。
 挨拶代わりのMCを挟んで入った「その日まで」は、1991年11月の『TOO BAD』に収録の楽曲。これまであまりライヴで演奏されてこなかったが、この曲の制作の裏には特別なエピソードがある。制作に入る直前のツアーでのこと。福島でのライヴ中に、アクシデントがあり宮田は病院に運ばれた。公演は中止になるわけだが、この時、楽屋で森、寺岡、小林がノートに宮田へ向けたメッセージを書いてスタッフに託している。そして3人でノートに書いた、宮田とまた一緒に音楽ができるその日まで、という想いを後日、森が曲にしたのが「その日まで」なのである。それが、この30周年の中、バンドにゆかり深い土地・ひばりが丘PARCOで『JUN SKY WALKER(S)展~「ジュンスカの日」認定記念&デビュー30周年企画展~』を開催するにあたり、過去の荷物を整理するうちに、保管してあったあのノートに書かれたメッセージが宮田の元から見つかったのだ。30周年を期に改めて触れることとなった楽曲に込めた想い。笑い、泣き、別れ、もう一度集まって……いろんな事柄を飛び越えて共に転がってきた時間。メンバーとのつながり。長年一緒に歩いてきたファンと新たなファンとの絆——そのすべてが乗った「その日まで」が、力強く、エモーショナルに響く。“笑って語ろう”“笑って走ろう”、今も進行形の約束が聴く者の心を鷲掴みにしていった。
 その余韻に浸っていると、ミディアムスローの「声がなくなるまで」が飛び込んでくる。日没が近づき、マジックアワーを迎えた空のグラデーションと届く音楽がすべての感情を包んでいった。
 歌始まりの「ガラスの街」では、ワンフレーズ歌った宮田が一旦歌を止め、「テンポ間違い」と仕切り直す。さらっと自らの間違いを口にし、一気にミディアムテンポの曲世界へディープに潜っていく。余計な力が全く入っていない振る舞いと自然なカッコ良さに、大人になった彼の在り方が滲んでいて、深みのあるヴォーカルと共に繊細なメッセージを浮き立たせる。曲の発表から30年が経とうとしているが、それでも変わらず争っては失い続け、嘘つきがいっぱいいて、いじめに遭っている子たちの正当な声は搔き消える世の中を生きている。でも、“自分がいつも正しい”という想いに対して、貫くべき誇りと、おごらず受け入れる間違いを見分けていければ、そして、そんな人が増えていけばいい方向に少しでも世界は動くはずだ。そう丁寧に紡がれる歌を聴きながら思った。
「これは未来への歌です。一歩踏み出す勇気を贈ります」
 宮田のMCから続いた、再結成後の曲「NO FUTURE」ではコーラスを重ねる寺岡と宮田が“My friend”のフレーズでお互いに指を差し合う。そして宮田はマイクをオーディエンスに向け、さらに客席に降りて歌う。いくつになっても遅くない、諦めない限り可能性は広がるという楽曲に込められた想いが、重なる声が多くなっていくほど、膨らんでいく。声と気持ちを乗せる全員で未来を創っていく、そんな大きな歌になる。その想いは、「PARADE」で最強のものへと昇華される。リズムに乗せて軽やかに弾んだ心が、“大人という季節をものすごいスピードで飛んで行く”、という言葉にシンクロした。
 一度メンバーが去ったステージのモニターでは、30周年企画のひとつとして昨年10月7日に東京・自由が丘駅前ロータリー広場で行なったホコ天フリーライヴの映像が流される。東横線のホームで居合わせた人が音楽に反応して手を振っている姿を見て、やはり彼らのまっすぐな音楽は即効で届くな、と思っていると、宮田と森の2人が姿を現わす。
「だいぶ薄暗くなってきたね」
 空を見上げた宮田が言い、言葉を継ぐ。
「こうやって2人でやるのは初めてだよね。解散したあとは仲が悪かったんだぜ。人生いろいろあるけどさ、今はスゲェ仲良しなんだよ」
 森がエレキギターを爪弾き、宮田がアコギをストロークしながら歌い出したのは「いつも二人で」だ。ゆっくりと、アンサンブルがたゆたう。1本のスタンドマイクで、2人が歌う。お互いの人生を歩き、そこで大切なものができ、たくさんのものを感じて、今また同じバンドで歩幅を合わせ進んでいる。その幸福感が伝わってきた。
 曲が終わり、小林と寺岡が合流したステージのモニターには、デビュー日である5月21日が「JUN SKY WALKER(S)の日」に認定されたイベントのダイジェスト映像が映し出される。これを、宮田はたっぷりの愛情を込めたSっ気を交えユーモラスに見せていった。
 そして、JUN SKY WALKER(S)は、カラッとした楽しみを振りまく。小林が書いたイラストがモニターでコミカルに展開する中、鳴り渡ったのは「アパート」。夢を追いかけ始めた頃に、風呂なし、共同トイレのアパートに住んでいた時の曲である。小林のバスドラムの野太いリズムに合わせて、オーディエンスがクラップを打つ。曲に練りこまれたロックミュージックへの敬愛と遊び心が気持ちを軽くしていく。純粋な喜びが湧き上がってくる。
 軽やかになったところに、心の柔らかい部分をギュッと握る、森のギターフレーズが飛来する。曲は「さらば愛しき危険たちよ」。小林と寺岡のリズム、宮田の言葉が体の奥底をノックする。自分の想いすらうまく言葉にできなくて、それでも思い描く未来を進もうと足掻いていたあの頃の自分が、今の自分に、“イカシタ大人になったか?”と語りかけてくる。心の内で、“大丈夫、大人になった今も、JUN SKY WALKER(S)の音楽を真正面から受け止めることができている。この音楽と共に生きている”と、青臭いままの素直な返事をあの頃の自分に返していた。
 ステージから届くのは懐古ではなく、今に問いかけてくる音楽だ。音楽の楽しさに紛れ込む問いに触れ、一つひとつ、自分の在り方を確認していく。オープニングからどんどん露わになってきた大切な想いや一人ひとりの“核”。それらを、前へ前へと転がしていくかのように、「歩いていこう」からは、演奏と歌がエネルギーの塊となってぶつかってくる。観客が腕を振り上げ、吠えるように歌う。「Let's Go ヒバリヒルズ」では、オーディエンスが頭上に掲げたタオルを旋回させる。
 そしてスローに入った歌と、気持ちを重ね作り出された合唱で始まった「すてきな夜空」。寺岡のカウントでバンドサウンドが入り、テンポを戻してからも会場にいる全員が胸を張り、高らかに歌う。空に向けピースサインを掲げる。
 とっぷり暮れた周囲の暗闇と、その中、煌々と照明が焚かれた屋外の会場で、JUN SKY WALKER(S)とオーディエンスが発するロックが未来を夢見て鳴る、それは平和そのものの景色だ。
 ライヴは、「ロックンロール☆ミュージック」でゴキゲンな熱の渦を作り出し、本編最後の「MY GENERATION」へと行き着く。タフなリズムがパワーを注いでくる。エッジの立ったギターが心を研ぎ、言霊の宿った歌が今立つ場所より先へとアジテイトしていく。日比谷野音には今、広い世代の人がいて、周りに普通にある嘘や理不尽や、大切に思うもののモロさに戸惑ったり、慣れようともがいていたり……いろんな人がいる。彼ら彼女らが直面している、もどかしさを突き破ろうと、空高く拳を突き出し、歌っている。世代を超え、さらに共に闘う仲間の歌になったんだな、と思えた。この曲のラスト、助走をつけた宮田がこの夜一番デカいジャンプを決めた。それはそこには全てを飛び越える力強さがあった。
 アンコールに応えた4人。宮田は、ロックシーンを駆け上がっていった当時を彷彿とさせる白地のロングスリーブTシャツを着ている。
 まず届いたのは1stアルバム収録の「遠くへ行かないで」だった。繰り返される“遠くへ行かないで”というフレーズ、そこには積み重ねてきた時間が溶け込んでいる。そして続いたのは、2018年発表の「One-Way」である。“遠くへ行かないで”、切々とした願いとちいさな憧れで始まったメジャーでの道には、くじけたこと、なくしたものがあり、でもだからこそ気づけたものや手にしたものがある。そんな道のりを宝物だと言い、2度と手を離さないように歩き続けようという意思が、淀みなく、音楽に乗って伝わってきた。その響きには、未来への希望がはっきりとあった。
 日比谷野外大音楽堂で許可されている、音を出していい時間のリミットが迫っていた。それでも、もう少し時間を共有したいという想いにJUN SKY WALKER(S)は2度目のアンコールに応える。森がまず登場し、小林、寺岡、宮田を順に呼び込んでいく。それぞれが想いを言葉にした後、小林のタンバリン、寺岡のキーボード、森のアコギ、宮田の歌という編成で届けられたのは「青春」だった。ピアノ伴奏に、宮田のしっとりとした歌が重なる。シャララ…4人の声がマイクに乗り、オーディエンスの声が乗る。アコギのストローク、タンバリンが生むリズム、人の温もりそのもののアンサンブルが響く。顔を天に向けた宮田の目に浮かぶものが照明を反射させて光る。命の短さ、儚さを美しく感じ、まっすぐ生きてきた日々を後悔なく抱えた歌が反響する。wow wowwow……繰り返される全員による歌とそこにある想いを受けとめて、宮田がロングトーンで締めた。
「A rolling stone gathers no moss.」
 常に自身と向き合い、研ぎ澄ますことで新鮮であり続ける、JUN SKY WALKER(S)。4人は、この30年にあった、喜び、楽しみ、興奮、悲しみ、別れ、再会、乗り越えたからこその強さ、仲間への想い……すべてを手放すことなく、時に足掻きながら、今も理想の未来へ転がり続けている。そんな彼らが発する音楽は、いつの時代のものでも、今の言葉として響き、聴く者の今に訴えてくる。
 そんな音楽に惹かれ、力をもらうオーディエンスは、各々の日常で理想の未来へ手を伸ばし続けているんだと思う。そして、彼らのライヴに集まって、気持ちをひとつにし、自分の現在地を確認する。その光景は、とてつもなくハッピーでハートフルだ。
 30周年というマイルストーンを越えたJUN SKY WALKER(S)はまた先へと転がっていく。そんなメンバーと、彼らの音楽でつながる世代を超えた人たちの、理想の自分に近づく旅はまだ道の途中。転がり続ける限り続くのである。

文・大西智之

SET LIST

01.全部このままで
02.だけど一人じゃいられない
03.BAD MORNING
04.その日まで‬
05.声がなくなるまで
06.ガラスの街
07.悲しすぎる夜
08.メロディー
09.NO FUTURE
10.PARADE‬
11.いつも二人で
12.アパート
13.さらば愛しき危険たちよ
14.歩いていこう
15.Let's Go Hibari-hills
16.START
17.すてきな夜空
18.ロックンロール☆ミュージック
19.MY GENERATION

(アンコール)
EN01.遠くへ行かないで
EN02.One-Way

(ダブルアンコール)
WEN01.青春